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【表4】より
会社員の安藤は弟の潤也と二人で暮らしていた。
自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、一人の男に近づいていった。
五年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。
新たなる小説の可能性を追求した物語。
これは良かった!
まず、これを最初に書いておきます。
この本は、2編の小説から成り立っています。
まず『魔王』これは安藤の死まで。
それに続く編として『呼吸』。
こちらは、安藤の死から5年後の潤也と純也の妻・詩織の物語。
2編からなる『魔王編』は、現在の日本と日本人を取り巻く閉塞感から脱却を目指す政治家・犬養と、「考えろ、考えろ、マクガイバー」をモットーにする安藤のお話。
現在の日本人の多数が感じているであろう閉塞感。
ナショナリズム・日本という国の個性の崩壊を閉塞感の根源に求め、そこからの自立を目指す犬養。
犬養の発言にこのようなものがあります。
「汚職や不祥事、選挙の敗北、それらの責任で辞任した政治家はいるが、国の未来への道筋を誤った、と辞任した政治家はいない。なぜだ?・・・(中略)・・・国民はもう諦めているんだろう。・・・(中略)・・・政治家が必死に考えているのは、政治以外のことだと見限っているわけだ。私は訊きたいのだが、それが正しい国のあり方か。私なら五年で立て直す。無理だったら、首をはねろ。そうすればいい。私が必死になるのは、政治のことだけだ」
こんなことを言われたら、今の日本人はなだれをうって従いますよね。
安藤はそれを危惧します。
大きな波に飲み込まれ流されることを。
それがファシズムだと。
波に飲み込まれず自分で「考えろ、考えろ、マクガイバー」と。
さて、ファシズムとは何だろう?と改めて考えました。
wikiによると、イタリアの政治家・ムッソリーニが自身の思想に付した名称だそうです。
観念としては、束・意思統一された団結というところでしょうか。
現在の日本は、良いところでもあり、国家としての弱さの部分でもあるのでしょうが、自由の名の下に個々がバラバラになり、収束がつかない状況なのかもしれません。
そこに犬養という強力なリーダーシップを持った存在が出現します。
自由という名の下に考えることを放棄してしまった国民は、憧憬とともに奔流に飲み込まれようとします。
安藤は自分に授かった特殊能力を持って、奔流を止めようとしたのです。
そして志を達する事が出来ず、命を落とすのです。
ここまでが『魔王編』です。
続く『呼吸編』では、安藤の死後五年が経ち、安藤の弟の潤也にもある特殊な能力がもたらされます。
それは”運のよさ”です。
潤也は”運のよさ”を元に競馬で大金を稼ぎます。
彼は「お金で人を救うことができるのか?」と考えます。
『呼吸編』は『魔王編』と比較するとかなり、ゆったりした内容になっています。
それは潤也と、彼の妻・詩織の性格によるところが大きいと思いますが、ここでも「自分の頭で考えろ」ということが度々でてきます。
国民を指導する犬養首相しかりです。
憲法改正の国民投票にあたっても「俺を信じるな。自分で考えろ」ですからね。
それも政治パフォーマンスと取れなくもない発言ではありますが。
ただ、この本に出てくる人物に悪人が居そうな感じはありません。
犬養にしても、安藤にしても、また潤也にしても。
三人とも自分の信じることを、それぞれのやり方で貫いているだけだと思います。
それともオオタカに姿を変えたとも取れる安藤・潤也・犬養の中に魔王がいるのでしょうか?
そのあたりに関してはまったく書かれていません。
もしかしたら、続編の「モダンタイムス」の中に書かれているのでしょうか・・・?
気になって仕方ありません。
是非読んでみたいと思います。
この本の中で改めて、漠然と思っていたことが、随所に出てきてもう一度考えなければと思いました。
折ってあるページが、かなりのページ数になっています。
「モダンタイムス」を読んだらもう一度読み返して見たいと思います。
かなりガツンときました。
無茶苦茶いろいろな事を考えさせられました。
http://media.excite.co.jp/book/special/isaka/
↑こちらも合わせてお読みください。
伊坂さんの魔王についてのインタビューです。
「考えろ、考えるんだ、マクガイバー」
「馬鹿でかい規模の洪水が起きた時、俺はそれでも、水に流されないで、立ち尽くす一本の木になりたいんだよ」
★★★★★
講談社文庫 H20.9.12
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○FFT
天狗の瓢箪が2回目で成功しました♪
ご支援いただきました、ズグダンさん・翼徳さん・ゆえさんをはじめ、皆様に感謝いたします
舞姫は相変わらずボム続きの8連敗です・・・。